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初音ミクのべたべた物語01

●0
 目覚めたのは、お店の中。
 棚の一番奥に、あたしはいた。
 あたしの名前は初音ミク。
 横にいるのも初音ミク。前にいるのも初音ミク。
 お店の棚に並んでいる、たくさんのあたし。
 前に並ぶあたしの隙間から、お店の様子がかすかに見える。いっぱいのお客さん。お店の人も忙しそう。
 ヨドバシカメラ町田店(※1)。
 あたしはそこで売られていたのだと、後になって教えられた。
 買われるのを待つあたしたち。お値段税込み15750円。
 横にはデモ用のテレビが置かれ、あたしの歌が流れている。

「ぁらっつぁっつぁ~や りびだびりん らば りったんでぃんらん でんらんどぅ♪」(※2)

 ……これ、歌?
「わば りっぱった ぱりっぱりっ ぱりり りびりびりすてん でんらんどぅ♪」
 えぇと……これ、何て歌っているんだろう?
 歌っているのは、あたしではないあたし。
「やば りんなん てんらん でいあろ~ わらば るぶるぶるぶるぶ どぅぃえぶ~♪」
 今のあたしには理解できない歌。
 買われたら、あたしにもこの歌が分かるようになるのかな?
 歌声に引き寄せられるようにして、お客さんがやってくる。
「初音あった~」
「良かった、俺の嫁残ってた!」
「………………高」
「やっとあった」
「ミクたんゲットぉぉ!」
 次々と連れていかれるあたし。
 目覚めた時にはたくさんいたあたしも、次第にその数を減らしていく。
 あたしがいるのは一番後ろ。
 あたしたちは横2列に並んでいるから、多分あたしが買われるのは最後か、最後から2番目になると思う。
「あぶねー、もうこれしか残ってなかった」
 あたしのななめ前のあたしが連れて行かれて、あと3人。
 どんな人があたしを買っていくんだろう?
「………………………………………………」
 あたしのすぐ前のあたしが、無言で連れ出された。
「う」
 腕を掴まれたその顔が、ちょっと引きつる。
 無言で、あたしの前のあたしを連れ出したお客さんは……その……
 と、とてもいかがわしい用途の女の子(エロゲ)達をたくさん連れていた。
 ひー、ふー、みー……
 その数、6人。
 1度に6人?
 あの、そんなに1度にたくさんの女の子を買うんですか?
 連れ出されたあたしが、こわばった顔で残されたあたしたちを見る。
 その目は、明らかに助けを求めているんだけれど……
 いるんだけど……
 ごめん。どうしようもない。
「なむー」
 と、手を合わせてあたしは拝んだ。
「あーめん」
 隣のあたしは十字を切っている。
 あれ、同じあたしなのに宗派が違う?
 連れ出されたあたしは、いかがわしい目的の女の子と一緒にカゴに入れられ……連れて行かれてしまった。
 連れて行かれた方向にあるものは、もちろんレジ。
 カゴに入れられたあたしは、最後までこちらをチラチラ見ていた。困ったような目で。
 うぅ……がんばれ、あたし。
 そして、あたしじゃなくて良かった。

 さて。
 残るはいよいよあたしと、隣のあたしの2人だけ。
 背中は冷たい金属の棚に当たっている。

 どんな人があたしを買っていくんだろう?
 1つ前のあたしが売れたから、視界がグンと広くなる。
 お店の様子が目に飛び込んでくる。
 明るい店内。行き交う人々。あたしの前を行き交うのは、そのほとんどが男の人。
「……………………………………」
 あ、まずい。
 ちょっとドキドキしてきた、かも。
 隣のあたしと顔を見合わせる。
 隣のあたしも、ちょっと緊張しているみたい。
「ぁひっか~ りんらん でんらんどぅ たか たかだがどぅどぅ でいやどぅ~♪」
 デモのあたしは陽気に歌っている。
 目をつむって大きく深呼吸。
「よし」
 気合いを入れて、買われるその時をじっと待つ。
 ドキドキとワクワクとハラハラの混じった緊張の時間。
 比率的には、ドキドキが一番大きい。ワクワクとハラハラはどっちも同じくらいかな?
「……………………………………」
 待つ時間は長い。
 長いと言うけれど……
 あれ? ちょっと長すぎない?
 また、隣のあたしと顔を見合わせる。
 隣のあたしも、首をかしげていた。
 誰もあたしを手に取らなくなった。
 さっきまで次々と、それこそ5分に1人は買われていったのに。もう10分、いや、15分は放置されている。
 錯覚なんかじゃない。あたしの位置からは時計が見えるもの。
 なんで? なんで?
 あたし、どこか変?
 あ、まさか服(パッケージ)が破れてるとかしてる?
 不安になって、またまた隣のあたしと顔を見合わせる。
 そのまま隣のあたしをチェック。
 顔、よし。
 服、よし。
 全体、よし。
 おかしな所はどこにもない。ないよね。
 あたしの頷きに、隣のあたしも頷く。
 どうやらあたしにも変な所は無いみたい。
 ……むぅ。
 なんだろう?
 気を落ち着かせ、正面を向き、買われるのを待つ。
 ドキドキとワクワクとハラハラの混じった緊張の時間。今はハラハラがドキドキと同じくらいに成長しちゃっている。
 何で、あたしを買う人は現れないんだろう?
 余計な不安ばかりが脳裏をよぎる。

 結局、それは単に売れる流れの谷間だったみたい。

 ものが売れるのにも、そういう流れっていうのがあるんだって。
 誰もあたしの前で足を止めなくなって20分。ちょっと泣きそうな気分になったころ、
「こちらでございます」
「どうもすみません」
 店員さんに案内されて、あたしの買い主は現れた。
 見た目は若い、男の人。あたしの運命の人。
 社会人なのかな? 学生なのかな?
 う~ん、見ただけじゃ分からない。
「こんな所にあったのか、見つからないわけだ」
 そう言いながら、男の人はあたしの手を取り、棚から連れ出した。
 あたしの番。
 棚に残ったあたしに手を振る。最後の挨拶。
「ごめんね、お先に」
「気にしないで。いってらっしゃい」
 笑顔で送り出してくれる最後のあたし。
 男の人はあたしを脇に抱いたまま、レジへと向かった。
 ついに買われるあたし。
 そういえば、「こんな所に」って何だろう?
 あたしはふり返り、自分の置かれていた場所を見る。
 その上には

「ゲーム」

 という看板がぶら下がっていた。(※3)
 って、ちょっ……
 まって、まって。
 あたし、ゲーム?
 ゲーム扱いされてたの?
 あたし、ボーカロイドだよ。ゲームじゃないよ。
 って、ひああぁぁぁぁぁっっっ!
 あたしの棚のすぐ横って、いかがわしい用途の女の子売り場じゃない!?
 なんで? なんで? 死ぬほどなんで!?
 あたし、ボーカロイドだよ、歌姫だよ!
 納得いかない。とてつもなく納得いかない。
 断固抗議したい。させてもらいたい。
 でも、誰に文句を言えばいいの?
 もやもやした想いを抱えたまま、ヨドバシのゴールドポイントカードと一緒にレジに差し出された。
「ぷー」
 ゲーム扱いかぁ。
 ちょっとふてくされちゃう。
 でもいいもんね。買われたらどこに置かれていたかなんて関係ないし。
 うん、前向き思考でいこう。
 -ピッ。
 商品コードを読んで、店員さんが一言。
「15750円になります。ポイントはご利用になりますか?」
「はい」
 え~~~~?
 思わず不満の声が漏れる。運命の人には届かないけれど。
 ポイント使うんですか?
 いえ、知ってますよ。ミクだって知ってますよ。お店のポイントはお金と同じ。
 別にどっちが上ってことはないんですよね?
 でも、何て言うんだろう。
 気分?
 そう、気分の問題かな。
 お金で買われた方が、何か大事に思われてる感じがするっていうか。
 そういう事ってないかな?
 ポイントってオマケっぽいって言うか……あー、どう表現すればこの気持が正しく伝わるんだろう? 商品としてのあたしの気持。
「20540ポイントご使用になれますが」
「じゃ、全額それで」
 全額~~~~!?
「はい、では全額ポイントご利用で」
 -チーン。
 それはいくら何でも……
 あたし、ポイント還元の女ですか?
 しくしくしくしくしくしく。
 まだ声は届かない。
 箱があけられるまで、あたしの声は届かない。
 結局、あたしは全額ポイントで買われてお店から連れ出された。
 いいもん、いいもん。ポイントは現金と同じだもん。
 あたし、サイフに優しいボーカロイドだもん。
 そう、自分に言い聞かせる。
 買い主は……
 えっと、あたしはこの人のことを何と呼べば良いんだろう?
 マスター? あなた? ご主人様? キミ? 旦那様?(※4)
 まあ、後でゆっくり決めればいいや。
 とにかく、あたしの買い主は、あたしを連れてお店を出る。
 これから始まるあたしのボーカロイド人生。
 どんな出来事が、あたしを待っているんだろう?

 お店から出て始めて見た空は……
 あたしの髪より淡く、澄んだ青色をしていたりした。

 (つづく、かもしれない)


※1:私が実際に買った店
※2:デモとして本当に「VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた」が流れてました(他に同じような映像がなければ)。なお、歌詞は見たときにコメントで流れていたものを参照しました。
※3:見つけられなかったのは私の実体験です。ずーっと音楽、映像系のコーナー見てて「ありゃ、売り切れか」とか思ってました。他のお店でもゲーム扱いだったのでしょうか?
※4:ホントに何て呼ばせたらいいんだろう

※参考※
<iframe width="312" height="176" src="http://www.nicovideo.jp/thumb/sm982882" scrolling="no" style="border:solid 1px #CCC;" frameborder="0">【ニコニコ動画】VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた
 目覚めたのは、お店の中。  棚の一番奥に、あたしはいた。
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